高校時代から舊漢字はふざけて使っていたが、この本が出たのを機会に、正しい漢字をちゃんと会得したいと考えた。複雑な字も書けるように、低学年用(100字)のジャポニカ学習帳を用意した。
書いて、覺えて、樂しめて 舊漢字――書いて、覺えて、樂しめて (文春新書)
名文の抜粋を鉛筆でなぞる企画だが、まずは見出しの150字を10回ずつ練習した。名文以外に用例がいくつか載ってる。舊漢字で書くと新鮮で、おかしみす ら感じる。次は、共通の部首を持つ字、紛らわしい字、なじみにくい字を集めてみたりして、慣れていきたい。残念なのは、肝心のなぞる文のフォントが明朝体 なので、手書きとは字形がしばしば異なり、なぞる気になれない。教科書体で印刷してほしかった。
Mac OS Xではヒラギノが搭載されていて、ことえりの「関連文字に変換」を使うと簡単に舊漢字に置き換えることが出来る。ヒラギノは文字が多いのだが、残念ながら 「平」「寒」などは新しい字形に統一されてしまっている。どのフォントを使えばよいのだろうか。趣味でならよいが、出版などでは困るのではないだろうか。
新字体は画数を減らし、漢字を制限したことにより、漢字を普及し、効率を上げたということに一定の役割は果たしただろう。国民の大多数が新漢字にな じんでしまっている今、一気に舊漢字に戻すのは、抵抗が多いだろう。しかし、略し方の方針は、中国の簡体字に比べて一貫性に欠ける。手書きが少なくなった 現代では、画数が多いことはさしたるデメリットではなくなっている。まずは舊漢字を知らない世代が、舊漢字を知る、書いてみる、読んでみることから始めた らよいと思う。その点で、手頃な新書でこの本が登場したことは意義深い。
実際に、舊漢字を書いてみると、見た目ほど難しいとは思わなかった。これで教わったらそれでもよかったかもしれない。変更するほどでもないと思う字 が大半である。著者が「難しすぎる」としている「龜」も書いていると、脳の使っていない部分が刺激されて、ある種の快感を感じる。スケッチをしているよう な漢字なので、右脳が刺激されているのだろう。
教養のために読む本というより、実践する傍らに置く本である。興味を持たれた方には、ジャポニカ学習帳とともに買っておいて、時間のあるときに手を動かしてみることをお勧めする。